埋蔵文化財の発掘 | ホーム > 土器と遺跡 > 埋蔵文化財の発掘 |
埋蔵文化財の発掘調査の手順についてかんたんに説明します。多くの人に発掘調査に対して興味を持っていただき、埋蔵文化財の記録保存に理解を示していただけますよう希望します。 左の顔の画像は須玉町御所前遺跡で発掘された縄文土器に刻まれていた赤ちゃんの顔です。ちょっと見ると宇宙人のようですが、シンプルなデザインの中に赤ちゃんの愛らしさが良く出ていると思いませんか。縄文時代のお母さんの愛情が表現されているのかもしれません。 |
1、 | はじめに |
2、 | 埋蔵文化財 - まいぞうぶんかざい |
3、 | 試掘調査 - しくつちょうさ |
4、 | 本調査 - ほんちょうさ |
5、 | 記録整理 - きろくせいり |
6、 | ことばのせつめい |
1、はじめに | ||
埋蔵文化財はわたしたちの祖先(そせん)の生活や文化を知るための大切な資料になるので、発掘調査(はっくつちょうさ)をして記録に残すことはとても大切なことです。21世紀に生きる私たちの子どもやその子供たちが自分たちの住んでいる町や村の歴史と文化をいつまでもほこれるように、わたしたちは埋蔵文化財を大切にして受けつがなければなりません。 | ||
2、埋蔵文化財(まいぞうぶんかざい) | ||
埋蔵文化財 (まいぞうぶんかざい)とは、 土の下や、海や湖の底に うまっているむかしのもの。 |
『埋蔵文化財』という言葉はあまりなじみのない言葉ですが、簡単に言うと、土の下や、海底や湖底に埋まっている遺跡(いせき)のことです。遺跡には、むかしの家やお墓、村の跡(あと)、城の跡などがあります。わたしたちの祖先が使っていた土器や石器(せっき)などの道具や家庭用品も遺跡から発見される大切な埋蔵文化財です。埋蔵文化財はその地域に住んでいた昔の人々の生活のようすがわかる手がかりにもなります。 | |
3、試掘調査 (しくつちょうさ) | ||
遺跡 (いせき)とは、むかしをしのばせるもの、つまり埋蔵文化財がのこっているところのことです。 最近ではレーダーで 地中に埋もれた遺跡を探します。 |
遺跡は役場にある遺跡台帳(だいちょう)に書かれて保管(ほかん)されます。須玉町では現在110ヶ所以上が登録されています。 こうした遺跡があることがすでにわかっている土地やそのまわりの土地で土木工事や建設工事をおこなうときには法律によって特別な届(とど)け出をしなければなりません。工事によって遺跡がこわされてしまうのをふせぐためです。工事の届け出があると、その場所のいくつかの所を簡単に掘り下げて土層を調べたり、出てきた遺物がいつの時代のものか調べます。 |
|
4、本調査 (ほんちょうさ) | ||
さて、いよいよ発掘調査に入りますが、ここでは家の跡やお墓の跡が見つかる遺跡を例にして見ていきましょう。 | ||
調査をする区域が決まると、まず、地上にある木など発掘のじゃまになるものを取りのぞきます。それから表土(ひょうど)をはぎます。表土がうすいときにはスコップなどを使って人力ではぐこともありますが、たいていの場合、機械でおこないます。この方が時間が早く地面を掘り下げることができます。 | ||
目印となるクイ。 |
つぎに、地形の測量(そくりょう)や基準(きじゅん)となる場所に杭(クイ)を打って目印をつけます。 | |
遺物包含層をていねいに 掘り下げていきます。 |
表土をはぐと、土器のかけらや石器などの遺物をふくんだ土の層(そう)があります。遺物包含層(いぶつほうがんそう)と呼びます。この土のそうをジョレンや移植(いしょく)ゴテで少しづつほり下げていくと土器や石器などの遺物が出てきます。 | |
align="left" | これはかなり原形が 残っている土器です。 |
表面が見えてきた遺物はすぐに取り上げてはいけません。その場所にそのままの状態にしておいて、竹串(たけぐし)を目印として立てておきます。 |
白線で囲まれた遺構。 所々の竹串は土器や石器が見えているところ。 |
出てきた遺物は記録してから取上げます。マジックペンで出た場所、出た土層(どそう)の名前、日付などを荷札(にふだ)に書いて遺物に付けたり、または取上げてポリ袋に入れます。 |
|
白線で示された土坑群。 |
このようにして少しずつほり下げていくと、家の跡やお墓の跡が現れてきます。これらを遺構(いこう)と呼びます。遺構はほとんどが土をほり、くぼめてつくってあります。ほりくぼめられた穴や溝(みぞ)には土が入ってうまっているので、遺構を見つけるのにはまわりの土との色の違いや種類の違いなどが大きな手がかりとなります。見つかった遺構には一つ一つ番号を付けておきます。 | |
発掘補助員たちがていねいに 遺構を掘り下げていきます。 |
次に遺構をほり下げます。住居址(じゅうきょし)の場合、十文字に土手をほり下げて土のうまりぐあいを観察します。土坑(どこう)と呼ばれる穴は、まず、半分にほり下げてから土のうまりぐあいを観察します。こうした遺構の中から見つかった遺物も記録したあとに取り上げます。遺構がほりおわったら、こんどは遺構の測量(そくりょう)を行います。 | |
左は土坑の内を掘り下げている写真です。 右の写真は、土坑内から見つかった土器片をポリ袋に入れ、見つかった場所に竹串でとめておいてあります。同じ場所にまだ土器片がうもれている可能性があるからです。 |
||
右手にカマド跡のある平安時代の 竪穴式住居址。周りに柱を 立てた穴がある。 |
遺物の記録や遺構の測量のほかに写真撮影(さつえい)も行います。作業風景や遺物の出土状況(しゅつどじょうきょう)、各遺構などを撮影します。最近ではビデオを利用して記録することもあります。 | |
5、記録整理 (きろくせいり) | ||
水洗 ・ 乾燥 (すいせんかんそう) 土器片を1つ1つブラシで ていねいに洗います。 |
遺跡から出土した遺物はどろまみれになっています。これを一つ一つていねいに水で洗ってからじゅうぶんに乾燥(かんそう)させます。しかし、中にはもろくなっている土器片などがあって、水につけただけでボロボロくずれてしまうものや墨(すみ)で文字が書かれてあるもの、または色が塗られてあるものがあるので、洗う前に注意しなければなりません。 吉という字が書かれている土器 |
|
注記(ちゅうき) 細かい作業ですが これをしないとごっちゃ混ぜに なってしまって大変なのです。 |
水洗がおわってじゅうぶん乾(かわ)いたところで、出土のときに荷札やポリ袋に書いておいた情報を土器片や石器の一つ一つに白色のポスターカラーで書きうつします。この時、書いた文字が消えないようにニスをかさねて塗って保護します。これを注記作業といいます。 今では注記も機械でできるようになって仕事が楽になりました。 |
|
接合・復元 (せつごうふくげん) 接合はジグソーパズルみたいです。 |
こうして注記した遺物を出土地点や遺構ごとに集めて、土器などを接合(せつごう)して復元します。すべての土器片がそろっていることはほとんどないので土器の復元は根気がいる作業です。土器片がたりない部分には石こうをうめておぎないます。 | |
拓本(たくほん) | 接合できないで形にならない土器のかけらで、めずらしい模様があるものは拓本によって模様を写し出します。 | |
遺物の実測 (じっそく) |
完全な形の土器や復元によって元の形のわかる土器や石器などはすべて図面にします。グラフ用紙やケント紙の上に、三角定規、ものさし、コンパス、デイバイダーなどを使って図面にするときには、実物の大きさや長さも測って図面に書き入れます。これを実測といいます。 | |
トレース | 報告書にのせる資料をトレース用紙を使って上からなぞって墨入れをします。これがトレースです。遺構なども同じように図面にします。 トレースも機械を使って以前よりとても楽にできるようになりました。 |
|
写真撮影 | 図面にした遺物もしなかった遺物も写真にとっておきます。 | |
報告書 | 発掘調査の仕上げには、整理したものを一つにまとめて報告書として本にします。 |
6、ことばのせつめい |
|
(C) 須玉歴史資料館