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木村二郎が八ヶ岳を訪れたのは1988年8月である。 大阪でインテリアデザイナーとして活躍し、週に3〜4日は徹夜という生活が続いていた。商業ベースの仕事のやり方と暮らしに疑問を持ち、「仕事のスタイルを変えて自分の仕事をしたい。クライアントは自分」と考えてはじめていたころに、八ヶ岳に出合いすぐに気に入ったのだ。 翌年末には、山梨に移り住んでいた。 寡黙でかっこよく、いつもニコニコしていた木村と会った人は、誰もがすぐに「二郎さん」と呼んだ。 毎日、あちこち散歩をしていた二郎さんは、古い釘やのこぎり、古道具の片隅に放ってあるような錆びたナイフの美しさに魅せられた。農家の庭先に捨てられているタンスを見て関心していた。古材、民具・農具が集められた。あぜ道を歩いているときに、ふと見つけた縄文土器の欠片を拾ってきた。 ふらっと姿を消し夕方まで帰ってこない二郎さん。 「どこに行ってたの?」と訊ねつづけたある日、八ヶ岳の森の中へと連れていかれると、そこには落ち葉木や蔓、自然の周りにある素材を組み合わせた“森のオブジェ”があった。それまで見たことのない不思議な世界を作り出していた。 これが二郎さんの八ヶ岳での軌跡の始まりだったのかもしれない。 text by Koichi Toya |
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